サツマイモが食文化の源

「サツマイモは準完全栄養食品だ」。九州沖縄農業研究センター(都城拠点)の吉永優上席研究員はそう教えてくれた。「炭水化物やビタミン、ミネラルなど栄養素が豊富。タンパク質だけ補えば必要な栄養のほとんどを摂取できる」というのだ。
 鹿児島の土壌は、桜島が毎日のように噴出す火山灰(シラス)が多く含まれる。これがイモにミネラルを供給している。また強い日照がイモにたっぷりの栄養を作らす。
 サツマイモは約300年前、南方から琉球を経て薩摩に伝わった。以来、このイモが何度も日本人を飢餓から救った。江戸期に繰り返された飢饉。太平洋戦争前後の食糧難・・・。他作物では厳しい土地や年でも育つ。塊根(イモ)は土中で守られ、茎と葉が地表をはって覆うので台風や干ばつにも強い。豆類と同様、空気中の窒素も取り込める。
 昔だけの話ではない。農水省は「食料輸入途絶時」のシュミレーションで、サツマイモ中心の献立を想定している。その時は、学校の校庭や原野も掘り起こし、重点的にサツマイモを植える計画だ。
(2012.02.26北海道新聞の「旅」より一部抜粋)