13種類のがんを血液一滴で

■13種類のがんを血液一滴で
 13種類のがんをごく早期に、しかもごく簡単な方法で発見する―そんな夢のようながん検査法を確立しようという国家プロジェクトが、いま佳境を迎えています。その方法とは血液中を流れている「がん細胞からのメッセージ」をとらえて、体に潜んでいるがんの種類を特定しようというもの。一体どんな仕組みなのか、そしていつ受けられるのか。研究の最前線を取材しました。(NHKスペシャル「人体」取材班 宮脇壮行ディレクター)
「夢のがん早期診断」が実現間近に
 東京築地にある国立がん研究センター。患者の皆さんが訪れる中央病院を裏に抜けると、ことし完成したばかりの新研究棟が現れます。その一角で日々研究が進められているのが、今回の画期的ながん診断技術です。まだ試験段階ではありますが、血液検査をするだけで、胃がん乳がんといった患者数の多いがんはもちろん、希少ながんも含めた13種類ものがん(大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、すい臓がん、卵巣がん、ぼうこうがん、肉腫、神経膠腫)を、ごく初期の段階で診断できるという、夢のような検査手法が実現しようとしています。
 最新報告によれば、がんを正しく判定できる精度は95%以上という結果が出ています(数値については変動があり、現在も精度を上げる努力が続けられています)。3年後の実用化を目指し、現在急ピッチで研究が進められています。
 この研究を率いる国立がん研究センター研究所の落谷孝広主任分野長は、「国民の多くの方がこの新しい検査を受けられる時代がくれば、がんを早く見つけ出し、早く治療することができるようになります。それによって、がんによる死亡者数を国民全体で減らすことが究極の目標です」と熱く語ります。