冬でも暖房使わず野菜育てる

■『冬の北海道で野菜を育てる』
 ちょっと聞いただけでは、野菜が厳しい寒さに耐えられるのか、農業用ハウスの暖房費がかさむのでは、といった心配が先に来がちです。
こうしたなかで、北海道上川の比布町にある道の農業試験場では、冬の厳しい寒さのなかで暖房を使わずに野菜を育てる取り組みを行っています。
外の気温が氷点下になるなかで、試験場の農業用ハウスの中の温度は3度から4度に保たれ、秋に植えたリーフレタスや小松菜など4種類の葉物野菜が元気に育っている姿が見られます。
担当の地子立さんは、暖房を使うことが当たり前の北海道の冬の農業を変えたいと3年前から研究を始め「暖房を使うと非常にコストが高くなってしまう。低コストで生産者が導入しやすいように無加温栽培という栽培方法を目指している」と話します。
暖房を使わずに野菜を育てる方法とはどんなものか。地子さんはまず、通常の農業用ハウスの中にもう1つハウスをつくり、外の冷気を伝わりにくくしました。
さらに太陽が当たらない夜は、作物の周りをフィルムで覆い、フィルムも3重にしました。
こうした地子さんの工夫で、昨シーズン氷点下26度2分の外気温の時も野菜の周りの温度は氷点下2度8分だったとうことです。
温度が氷点下まで下がると野菜は凍りますが、昼間に気温が上がるとすぐに解凍されるため、これまでの試験栽培では味や食感などに問題はないということです。
【厳寒栽培の利点と思わぬ効果】
厳寒の冬の時期に行う野菜栽培には、ほかにも利点があります。
寒さに耐えるために野菜はエネルギーとなる糖分を蓄え、糖度が夏に育てたものより高くなるのです。
また、気温が低いために害虫もほとんど発生せず、病気になりにくくなるため消毒などの手間もかかりません。
さらに、研究の過程で思わぬメリットも見つかりました。
気温が氷点下前後まで下がると野菜の成長の速度が極端に落ちたのです。
夏場なら、収穫期を迎えた野菜を植えたままにしておくと成長が進んで味が落ちますが、冬はそのまま栽培を続けることができ、農家は市場価格が高い時期を選んで出荷することができるのです。
【冬の農業を開拓へ】
暖房を使わない冬の野菜栽培は、道内各地の農家が視察に訪れるほか、冬場の雇用の確保にもつながるため、一部の自治体も期待を寄せています。    
農業試験場は、農家に取り組んでもらうためには温度が保たれる仕組みを解明し、どの程度の寒さまで耐えられるのかなどをさらに詳しく調べる必要があると話します。