函館の魅力は全国一・・・幸福度は?

■魅力度」高い函館 「幸福度」なぜ最下位? 調査方法、使用データに違い
 Q 函館(はこだて)市議会の一般質問(いっぱんしつもん)で、函館市の「幸福度」が最下位だったという民間シンクタンクの調査(ちょうさ)結果が話題になったらしいね。函館市は「魅力(みりょく)度全国1位」だったんじゃないの。
■「魅力」は観光、「幸福」は経済が影響
 A まず、幸福度と魅力度を調べた機関と対象が違(ちが)うことを説明するよ。幸福度ランキングは、日本総合(そうごう)研究所(東京)が全国の人口20万人以上の中核(ちゅうかく)市42市を対象に実施(じっし)して8月に発表し、函館市は42位だった。一方、魅力度ランキングを手がけたのは、ブランド総合研究所(東京)で、全国の全790市(4月現在(げんざい))と東京23区、さらに地名の付いた商品開発など「地域(ちいき)ブランドの取り組みに熱心」と研究所が認(みと)めた187町村を加えた千市区町村が対象。結果は10月に発表され、函館市が3年連続4度目の1位だった。
 Q どうして結果がこんなに違うの。
 A どういう調査をしたかが異(こと)なるからだよ。幸福度ランキングでは、《1》人口増加率(ぞうかりつ)《2》1人当たりの所得《3》国政(こくせい)選挙投票率《4》財政(ざいせい)健全度《5》合計特殊(とくしゅ)出生率《6》自殺者数―の六つを「都市の持続可能性(じぞくかのうせい)や住民生活の根幹(こんかん)を支(ささ)える要素」として「基本(きほん)指標」に設定(せってい)。これに健康や文化、仕事などに関する33指標を加えた計39指標でデータを比較(ひかく)して総合順位を出したんだ。函館市は基本指標でも最下位だった。
 他方、魅力度はインターネット調査による全国約3万人の回答が基礎(きそ)データなんだ。「魅力的だと思うか」「行ってみたいか」など77項目(こうもく)の質問(しつもん)を設定し、4〜5段階評価(だんかいひょうか)などで尋ねて「魅力度」「観光意欲(いよく)度」といった項目ごとにポイントに換算(かんざん)し、そこから総合順位を出したんだ。「その地名を聞いて思い出す食べ物」を記述(きじゅつ)式で答えてもらう項目もあった。
 Q 二つの調査からどんなことが分かるのかな。
 A 幸福度の上位は《1》豊田(とよた)市《2》長野市《3》高崎(たかさき)市《4》岡崎(おかざき)市《5》金沢(かなざわ)市。日本総研は順位について「仕事に関連する指標との相関性が強く、広域的な経済(けいざい)活動(の有無)が影響(えいきょう)している」と分析(ぶんせき)しているよ。仕事があって圏域の経済が活発なまちが上位だったんだね。同総研は函館を含(ふく)め基本指標で下位だった市について「課題を的確(てきかく)にとらえ、状況(じょうきょう)に即(そく)した総合的で体系(たいけい)的な対策(たいさく)を講(こう)じることが求められる」と指摘(してき)している。
 魅力度の函館以下は《2》京都市《3》札幌(さっぽろ)市《4》小樽(おたる)市《5》横浜(よこはま)市―で、観光地が上位を占(し)めている。函館市は観光地として魅力的だと言えそうだけれど、ポイントは昨年の51・7から今年は46・8に落ちている。北陸新幹線(しんかんせん)開業などで観光地同士の競争が激(はげ)しくなっていることが背景にあるようだ。
 Q 二つの結果にギャップがあることを、どう受け止めればいいんだろう。
 A 幸福度は市民に直接(ちょくせつ)聞いたわけではないから、市民の実感とは違うかもしれない。ただ、人口減少など厳(きび)しい現実があることは確(たし)かだ。「ここで暮(く)らして幸せ」と感じて住み続ける人がいてこそ、観光地としても魅力的と言えるんじゃないかな。函館では二つの結果を参考に、住んでいる人の幸福度を高めながら、観光地としての魅力を磨(みが)くための政策(せいさく)が必要と思うよ。
(2016.12.15北海道新聞より一部抜粋)