函館の折内養蜂園 今年も

■函館の養蜂、今年も 農作物の受粉に一役
 【函館】野鳥のさえずりが響く函館市郊外の山地。函館で唯一の養蜂家折内涼さん(38)は、今年も花の開花に合わせ、ハチミツの採取を始めた。「自然や生き物が相手だから思うようにいかないこともあるが、函館で続けられてきた養蜂を守っていきたい」と忙しい日々を送る。
 函館市のハチミツ生産・直売業「折内養蜂園」(本町25)は、花を追って全国各地を移動しながら養蜂を行っていた折内さんの祖父幸太郎さんが1965年、函館に拠点を置いて開業した。折内さんは幼い頃から祖父の手伝いを続けてきた。「祖父は技術をああしろ、こうしろとは言わなかった。だから見て覚えました」。生涯現役で養蜂を続けた幸太郎さんは10年前に亡くなり、折内さんが2代目として跡を継いだ。
 養蜂場は蜜源の花が群生している函館市内や近郊の数カ所。蜂箱の数は場所によって違い、一つの箱には1匹の女王バチを頂点に、4万匹が巣を作る。箱は2段重ねになっており、それぞれ木枠9枚で分断されている。ハチは上の段に蜜を集め、下の段では卵を産み育てるしくみだ。
 「今年は長雨でアカシアの花が落ちるのが早かった」と折内さん。雨が続くと、花に蜜が付きにくく、ミツバチも飛ばないため、蜜の集まりが少なくなる。くせのない「トチ」、あっさりとした「アカシア」、さまざまな花の蜜が集まる「百花」と、6月から7月末頃までの採集シーズン中、採れる蜜の種類も変化していく。
 集めた蜜はこした後、本町の店舗で販売。市内のパン店や菓子店も材料として購入する。量り売りもしており、瓶を持ち寄って複数のハチミツを試す人も多い。道南の農家に授粉用としてミツバチの貸し出しも行っている。
 「養蜂は蜜を採るだけでなく、果物や野菜作りに役立てることもできる。あまり知られていませんが、函館でも養蜂が行われていることを多くの人に知ってもらいたい」
(2016.07.14北海道新聞のみなみ風より一部抜粋)