植物の葉緑素は虫から身を守る働き

■葉を食べられると毒に変化 北大低温科学研究所など発見
 「植物はいずれもクロロフィラーゼという酵素を持っており、この酵素の作用で、水に溶けにくい葉緑素が溶けやすいクロロフィリドに変わることが100年以上前から知られていました。
 細胞が正常に機能しているときは葉緑素とクロロフィラーゼは触れ合わず、何も起こらない。しかし葉をすりつぶして細胞を壊したところ、直ちに葉緑素クロロフィルドに変わった。その意味するところは何か。
 研究チームはガの一種・ハスモンヨトウの幼虫に、葉緑素を含む餌とクロロフィルドを含む餌をそれぞれ与えて比較した。その結果、クロロフィルドを与えた方が幼虫の成長が抑えられ、致死率も高いことが分かり、クロロフィルドには昆虫に対する毒性があることが確認された。
 「昆虫が葉を食べると細胞が壊れ、瞬時に葉緑素クロロフィルドに変わる。植物はその毒性を身を守るために活用していると考えられます」
 クロロフィリドの作用の解明はこれからだが、幼虫の腸に付着して栄養吸収を妨げるいる可能性がある。毒性は市販の殺虫剤に比べて非常に弱く、これだけで植物が身を守ることはできませんが、基になる葉緑素は体内にたくさんあるので、有効活用しているとみられる。「毒性が弱いのは、長い進化の過程で、昆虫の方も徐々に適応してきたためかもしれません。
(2015.03.09北海道新聞より一部抜粋)