反原発 小出助教の定年退職(1/2)

■反原発の小出助教が定年退職
京都大学原子炉実験所の小出裕章助教(65)といえば、反原発の旗手としてつとに知られた人物である。
「皆さんは、何が一番の福島の教訓だと思いますか。原子力は怖いとか危険ということかもしれないが、私が思っているのは、最大の教訓は原子力というものはどんな悲惨な事故を起こしても、誰も責任をとらないということです」
 退職講演に先立つ2月22日、東京都内で開かれた「原発と差別」と題したシンポジウムで、小出さんは聴衆にこう語りかけた。
原発事故で住民は根こそぎ生活を奪われた。しかし東京電力の社長も、政府も誰一人として責任をとらない。電力会社が再起動に突き進むのは、責任を取らなくていいし、会社はつぶれないと思っているからだ。住民だけが苦悩の底に落とされた。一番大切なのは、個人にも、組織にも責任を取らせることだ。
 退職講演で言った。「原子力は徹底的に危険だし、破壊的だ。でも私が原子力に反対している理由は根本的に違います。徹頭徹尾、無責任で、犠牲を他者にしわ寄せするからです」
 小出さんは、その根底に「差別」を見て取る。
原発は決して都会に造ることはできず、過疎地に建てられた。事故が起きれば、「他者」が犠牲になる。原発は差別の上でなければ成り立たない。事故が起きなくても、核分裂生成物という毒物をまだ生まれてもいない子供たちにまで押し付ける。これは「未来犯罪」と呼ぶできだ。
(2015.03.08北海道新聞の異聞風聞より一部抜粋)