老舗菓子店「沼の家」の大沼だんご

 串に刺さず、ようじで一つずつ食べる和菓子「大沼だんご」。
北海道の渡島管内七飯町の老舗菓子店「沼の家」(ヌマノヤ)の看板商品だ。
 沼の家は現在のJR大沼公園駅前に1905年(明治38年)に創業した。大沼を観光地にしようと、考え出したのが大沼だんごだった。4代目社長の堀口慎哉さん(58)は「父に連れられて駅で立ち売りをしたものです」と懐かしむ。
 沼の家は戦時中、廃業の危機に立たされた。コメや砂糖などの原料不足のため、1942年(昭和17年)から団子を作れなくなった。この間、貸座敷を営むなどして生計を立てた。「食べていくのに何でもやった。苦労は当たり前だった」。一家を切り盛りした祖母は戦後にこう振り返っていた。
 創業者の祖父母から伝えられてきた言葉がある。「程」(ホド)。物事は何でもほどほどに、という意味。大沼だんごは芸能人がお忍びで買いにくるほどの人気だが、大沼以外で売ることはあまりない。堀口さんは「自分の能力以上のことをすると、店の評判が下がってしまうから」と謙遜する。
 真面目に、できる範囲でー。堀口さんは先人の教えを大事にして、店を守り続けるつもりだ。
(2015.01.20北海道新聞の「まど」より抜粋)