強い農業オランダ

 巨大工場さながら、野菜や花を大量生産し世界第2位の農産物輸出額を誇るオランダ。一方で、大規模化に抗するように、こだわりを持って有機野菜を栽培する小規模生産者が、少しずつ増えている。
有機農地5倍に
「野菜は工業製品じゃないの。人工的な環境で強制的に育てるより、野菜自身の力で自然に成長させた方がおいしいし、体にも良いわ」。掘り出したばかりの人参を手に、ウウェルムート・デ・ワールドさん(38)は笑顔を見せた。
 フードバレーの拠点であるワーゲニンゲンの近郊の小村ヘンメルン。大学を卒業し、農場で働いた後、独立したワールドさんが友人の女性3人と無農薬の有機栽培で野菜を作り始めて7年。大手の流通に乗せず地元の消費者と直接契約し、宅配を続けてきた。手探りで取り組んできた営農は、ようやく軌道に乗りつつある。
耕作面積は4ヘクタールで、オランダ平均の約6分の1。収入も多くないが「地元で作った野菜は、地元で食べるのが人間の基本。輸出は遠くまで運ぶのでエネルギーの無駄遣いだし、誰が作ったか分からないから、安全性に不安を感じる人が多い」。ワールドさんは地産地消の大切さを力説した。
 実際、有機農業は静かな広がりを見せている。経済協力開発機構OECD)によると、オランダの農地に占める有機農地の割合は、2008〜10年の平均で2・6%。02年〜04年平均の0・5%の5倍超となった。OECD諸国の中では中位だが、日本の0・2%を大きく上回る。
北海道新聞より一部抜粋)