TPPで北海道の農業2兆円超影響

■TPPで北海道産品窮地 2010年の道試算、農業2兆円超影響
 安倍晋三首相が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を正式表明したことで、農作物をはじめとする北海道内の1次産品は、関税が下がったり撤廃されれば、安い輸入品の攻勢にさらされる懸念が出てきた。道が2010年に試算した農業分野への影響は総額2兆円超。政府が新たな試算をまとめたため、道もTPPに参加する11カ国からの輸入を想定した試算見直しを行い、影響の深刻さを訴える構えだ。
 10年の道の試算では、農業生産額や関連産業、地域経済を合わせた影響額は2兆1254億円に及ぶ。まず農業生産額は、コメと小麦、ビート、でんぷん原料用ジャガイモ、酪農(バターなどの乳製品)、牛肉、豚肉の計7品目で6180億円減少。これは関税撤廃と、国内対策を講じないことを前提にした。
 北海道産のコメは年間生産量が60万トンあり、全国で新潟県と一、二位を争う大産地。農業団体も「安い外国産が入り込めば、道産も駆逐される」と主張し、10年の試算では生産額が1130億円減るとはじいた。
 畑作物は、道の試算ではビート(砂糖の原料作物)492億円減、小麦418億円減、でんぷん用ジャガイモ160億円減と見込む。砂糖とでんぷんは外国産と混ぜられて流通することもあり、「品質差がつきにくく、価格だけで評価されてしまう」(道内の農業団体幹部)のが特徴だ。
 関税が撤廃された場合、外国産に対する国産の価格はでんぷん、砂糖いずれも2倍以上で、販売は難しくなる。
 北海道内にはでんぷん工場が17カ所、製糖工場は8カ所あるなど関連産業の裾野は広い。7品目全体で関連産業への影響額は5215億円、商店や飲食店、金融など地域経済への影響は9859億円にのぼり、全体で17万3千人が失業し3万3千戸の農家が減ると算出した。
(2013.03.16北海道新聞より)