素粒子研究施設 復興の起爆剤に

■東北の産学官北上山地素粒子研究施設を誘致推進
 東北経済連合会東北大学岩手県などは10日、素粒子研究施設「国際リニアコライダー」(ILC)の岩手県北上山地への誘致を推進することで合意した。実現性を探っていた研究会を誘致推進組織に変更した。経済波及効果が約4兆3000億円に上るとする試算も公表。東日本大震災からの復興に資するとして政府に北上山地を候補地に選ぶことを働き掛ける。
 建設地は全長31〜50キロメートルの地下トンネルを掘れるのが条件。精密な実験をするため活断層のない安定した地盤が求められる。研究会が2011年度に実施した地質調査で北上山地が硬質な岩盤が広く分布する適地であることを確認した。
 経済波及効果は研究施設の建設や運営、関係者の消費支出で30年間に約4兆3000億円が生じると推計。全国で約25万人の雇用を創出すると予測した。
 岩手県はILCを復興の象徴と位置付け、復興計画に誘致を盛り込んでいる。研究会は経済効果が岩手県だけでなく東北全体に及ぶとみて、調査研究が中心だった組織を積極的に誘致活動を展開する「東北ILC推進協議会」に変更した。研究機関や企業などの会員を拡大し、国や国際機関への働き掛けを強化する。
 ILC建設の基準となる設計書は今年末までに国際共同チームが作成する。東北大が中心となって北上山地での建設計画をつくる予定だ。
 建設地は政府間協議を経て2〜3年後に決まる見通し。国内では九州でも誘致の動きがある。政府は11年度第3次補正予算で調査費などに5億円を計上。今秋以降に東北と九州で掘削調査を実施し、調査結果を来春に公表する。
 協議会の代表に就いた東北大の里見進総長は「世界や人類の将来を左右する可能性のある研究拠点を持ってくれば、東北の産業構造が変わる」と話した。
日本経済新聞より一部抜粋)