原発めぐる男女の意識差

香山リカのふわっとライフ
 同世代の男女10人ほどで会食をする機会があった。企業経営者、研究者に音楽家など、職種はさまざまだ。話題が震災復興のことから、日本のエネルギー問題に及んだときのこと。一人の女性がこう切り出した。
 「この中で脱原発、反原発の人は何人?私はそうだけど。毎週首相官邸前のデモにも行っているの」
 彼女の呼びかけに「私も」と手を上げた3人は、私を含めて全員が女性だった。その様子を見て、男性たちは口ぐちにこう言った。「感情的に反対、反対と言ったって、それが日本の産業にどれくらいダメージを与えているか、わかっているの?」「中国をはじめとしてアジアは原発建設ラッシュなんだ。日本だけ遅れるわけにはいかないよ」。なんだか国を背負って立つ人のような口びるだ。
 男と女、大きな違いがあるとは思いたくない。しかし、この問題に関しては、からだと心で感じたままに「原発はコワい! 食べ物も心配、とにかくやめる方向で」と言い、行動する女性たちと、「国際的な観点では」「長期的なエネルギー政策から」などと大局的な立場に立とうとする男性たちの間で、かなりのギャップがあると言わざるをえない。
 さて、どちらが正しい態度なのか。ここで答えを出すことはできないが、いつも思うのは、男性たちは福島から今も避難している大勢の人たちの目を見ながら、同じように「日本経済が停滞するのは困るんだよ」と言えるのか?ということだ。今回は、”オンナの直観”を信じたい、と私は思っている。(精神科医
(2012.7.31北海道新聞より抜粋)