焼却灰は東京電力へ返却

■がれきに見る無責任の拡散
 国が全国の自治体に受け入れを求める震災がれき。「広域処理」推進キャンペーン。放射能を扱う原則は、「閉じ込める」。国のやることは逆を行く。薄く、広げるーだ。放射能とともに、無責任も拡散する。
道議会を傍聴すると、推進論が大勢。高橋はるみ知事も自民、民主の両会派も「早く」「積極的に」。「いま一度『がんばろう、日本』。(東北との)絆を大切に」 高橋知事「市町村が混乱することのないよう、密接に緊密に連携し、積極的に取り組む」
 だが、逆の声も聞こえる。「広域処理とは、地方に丸投げするということ。本当はまずいのに、いつの間にか引き受けなければというムードに道も議会も流されている。
 そもそも政府に震災がれきを「安全」と言い切る能力はあるのかー。
環境相は廃棄物やがれき処理は担当するが、放射能に関しては技術的知見を持ち合わせていない」。環境省の担当者は広域処理に反対する市民団体との集会でこう言い放ち、参加者をあぜんとさせた。
 政府は「絆」という言葉に寄り掛かり、強引に広域処理にのりだした。
「(放射能汚染)将来に不安が残ることはやるべきではない」。筆者は、受け入れを拒否する札幌市の上田文雄市長の考えは当を得ていると思う。
 原子核物理学者で原子力の危険性に警鐘を鳴らす小出裕章・京大原子炉実験所助教に尋ねると、次の答えが返ってきた。
「政府のやり方には明白に反対です。現地に専用施設を造るべきです」。その上で、仮に全国で処理する場合の条件として
(1)焼却施設に専用フィルターを付け、現場で性能を確認すること。
(2)焼却灰は各自治体が処分するのではなく(原発事故を起こした)東京電力に返すこと。
 小出氏によれば、福島第一原発では事故処理のため今後膨大なコンクリートが必要になります。焼却灰の活用ならまさに一石二鳥です。広域処理を言う前に政府は無策を反省し、自治体と住民が納得できる対応を示すことだ。
(2012.04.01北海道新聞より一部抜粋)