トマトに殺到

■いつの世にも食わず嫌いはあったよう。大航海時代に原産地・南米大陸からイタリアに渡来したトマトも、初めは伝説の有毒植物「マンドラゴラ(悪魔のリンゴ)」の仲間とされて、もっぱら観賞用に栽培された。
▼16世紀後半、飢饉(ききん)が襲う。空腹極まって恐る恐る口にすると…。意外においしい。かくして「悪魔のリンゴ」は欧州各地に広まり、イタリアで「ポモドーロ(黄金のリンゴ)」と呼ばれるようになった。(「西洋たべもの語源辞典」東京堂出版
▼現代では健康にいいとの評価が定着しているトマトだが、最近はジュースも含めて品薄状態のところもあるらしい。きっかけは京大大学院の研究。血液中の中性脂肪を抑える成分を有し、肥満予防に効果があるとの報道が人気に火を付けた。
▼バナナ、ナタデココ、納豆、ココア―。いっとき小売店の棚から姿を消した食べ物たちが思い浮かぶ。食品の効果を過大に信奉することを「フードファディズム」というそう。
▼「ファド(fad)」とは「一時的流行、熱中」と辞書にある。<これさえ食べれば問題解決>と単一食品に頼るのは危ない。いろんなものを、バランス良く取るのに勝る健康法はない。
▼似た言葉に「ファシズム全体主義)」というのもあった。<これさえすれば問題解決>という単純で乱暴な政治にすがると、ろくなことにならない。歴史が教えている。
(2012.02.22北海道新聞卓上四季より引用)