お茶は水分か?

 今年も暑い夏です。もう残暑ですが、まだまだ熱中症に対して油断は禁物です。水分の補給に心がけてください。熱中症で倒れたお年寄りの中には「水分はちゃんと取っていたのに」とおっしゃる方も多いと聞きます。ではなぜ水分を取っているのに熱中症になってしまったのでしょう。
 テレビ、新聞などでも熱中症対策に水分補給が勧められておりますが、この「水分」という言い方に問題があります。医療関係者の間で水分というと、ほとんど真水のことを指しています。あるいは、体の中にあるごくうすい塩分のことです。
 ところが、みなさんはどうでしょうか。お茶やコーヒー、ジュースを水分だと思っていないでしょうか。確かに水でできている飲み物ですから。でも、これらは熱中症対策にはほとんど効果がありません。特にお茶やコーヒーにはおしっこをたくさん出させる成分が入っているので、たくさん飲むとおしっこがたくさん出て、飲んだ以上の水分が出てしまう可能性があるからなのです。
 熱中症対策には、体の水分を増やして、これによって汗をたくさんかいて、体を冷やすことが大事です。お茶ではせっかく飲んだ水はおしっこになってしまい、汗にならないので、体を冷やせないのです。お茶は水分だとは思わないで下さい。水分補給は、やはり真水が一番。一般によく飲まれているスポーツ飲料も水分補給の効果がありますが、「甘い」ので、血糖が心配なお年より向きではありません。そんなにたくさんでなくてもいいですから、こまめに真水を飲みましょう。それに、塩分補給もお忘れなく。
(とうせ・のりつぐ=札医大医学部教授)(2011.08.24北海道新聞