原発の安全、低コストが崩れ去る

■質問:原発には問題が多いと指摘していますが。
 「研究開発に多額の投資が必要なほか、今回の事故も莫大な補償が見込まれ、コストが安いとは言えません。使用済み核燃料を再処理し再利用する核燃料サイクルの問題もあります。再処理工場は完成が何度も先延ばしにされて稼動のめどが立たずサイクルの要の高速増殖炉も事故や故障が続き、再処理路線は破綻の危機にひんしています」
■質問:太陽光や風力発電の可能性は。
 「現在、日本で再生可能エネルギーは電力全体の1%にも満たない状態ですが、デンマークは12%以上、ドイツは15%以上を占めています。ドイツでは洋上風力発電の開発や既設風車の大型化を進める一方、内陸の南部は太陽光発電が盛んです。家畜の糞尿などを利用し、天候に左右されないバイオマス発電プラントも6千基あります。電力のうち風力の割合は7・5%で、日本はわずか0・3%です。しかし、海に囲まれた日本は風力発電の条件に恵まれ、特に北海道内は有望視されています。日照時間が長い北見市などでは太陽光発電も期待できます」
■どのように普及させますか。
「事業者の参入を促す電力の全面自由化が不可欠です。多様な発電事業者が電気を公平に送れるよう、送電網管理を別会社にして公的機関が経営に加わる方法もあります。大事なのは『やる気』です。政府はエネルギー基本計画を大幅に見直し、長期方針を定めて再生可能エネルギーへかじを切るべきです。技術と投資を集中すれば雇用創出や産業振興にもなるはずです」
北海道大学院経済学研究科教授吉田文和)
(2011.04.07北海道新聞より一部抜粋)