農業の国際競争力どう強める

減反やめ規模拡大図れ
 農林水産省ガット室長などを歴任したキャノングローバル戦略研究所(東京)山下一仁研究主幹に聞いた。
 政府は「規模加算」など戸別所得補償の拡充で農家の大規模・効率化を促す案を示しているが、効果は到底期待はできない。所得が確保されれば零細・非効率な兼業農家は農業を続け、農業収入が中心の「主業農家」に農地が集まらない。高コスト構造は改善しない。。
 まず高米価を維持するための減反政策をやめ、米価を下げること。その上で主業農家に限り、政府が直接支払いをすべきだ。主業農家は地代支払い能力が向上し、規模拡大も進むだろう。減反を条件としたばらまき型の戸別所得補償では、高米価という「消費者負担」に「納税者負担」が加わり、二重の負担を国民に強いることになる。
 減反をやめた場合、国内米価は60キロ9500円程度に下がると想定される。現在でも日本米の価格は中国米の1・4倍程度まで近づいており、価格競争力は必ず高まる。
 人口減や高齢化で国内消費が減少の一途をたどる中、発展するアジア市場へ輸出できるようになる。
 他品目についても、政府の直接支払いという補助金でコストを下げれば、国内生産を維持しつつ、消費者は安い農産物価格のメリットを受けることができる。農業保護への理解にもつながるだろう。
(2010.12.1北海道新聞より抜粋)