日本人の個人ゲノム解読

理化学研究所などのチームが日本人の個人ゲノム解読
 日本人男性一人の全遺伝情報(ゲノム)を、理化学研究所と東京大医科学研究所の研究チームが高精度に解読し、米科学雑誌ネイチャー・ジェネックス電子版に10月25日発表した。日本人の個人ゲノムの解読成果が論文で発表されるのは初めてという。
 さまざまな人で解読が進めば、従来の集団レベルの解析では見過ごされてきたがんなどの難病の関連遺伝子が明らかになると期待される。
 この日本人は、過去に国際プロジェクトの一環としてゲノムの概要が解読されていた男性。多数の人の断片的なゲノム解読データを集大成した国際データベースと比較すると、約30億個のDNA塩基配列のうち、99%が一致した。しかし、従来知られていなかった配列の個人差が約39万6千箇所で見つかった。
 遺伝子の動きに影響する可能性がある部分では、個人差が約1万カ所あった。また、欧米人、アフリカ人、中国人、韓国人の計6人の高精度解読データと比べると、嗅覚や科学的刺激の認識に関係する遺伝子で、働きに影響する配列の違いが多かった。
 ゲノム解読は近年まで長い年月と多額の費用が必要だったが、DNA解析装置の性能が大幅に向上し、高精度解読が容易になった。
 個人ゲノムのデータは病気の原因解明や新薬開発に役立つ一方で「究極の個人情報」であるため、一般の場合はデータが流出すると、就職や結婚の際の差別につながる恐れが指摘されている。
(2010.10.25北海道新聞より抜粋)