大根の面白い生態

 大根と書くくらいだから、大根は大きな根だろうと思うだろうが、話はそう簡単ではない。
貝割れ大根は大根の芽生えである。双葉の下にある茎は胚軸と呼ばれるている。実は大根は、根だけでなく、この胚軸も太ってできているのです。大根をよく見ると、下のほうにはひげ根がついていたり、根のついていた痕跡が見られるが、上のほうはつるんとしている。この上の部分が胚軸なのだ。胚軸の上には茎もある。大根の葉の付け根に短くわずかにある部分が、双葉の上にできた茎である。
 畑で見ると、大根の上のほうは土の上にはみ出している。上の部分はもともと胚軸なのだから、これは当り前のことだ。
大根の下のほうに生えているひげ根や根の痕跡は、整然と二列に並んでいる。しかし、きれいに並んでいないこともある。これは土が固くて根をねじこませながら生長した苦労の証である。ときどき、先が二股に分かれて、女性が足をくねらせたような色っぽい大根ができて人々の笑いを誘うが、笑ってはいけない。これも石ころや固い土壌などの障害を乗り越えて生長したからなのである。
大根の栽培の歴史は古いのである。大根の原産地は地中海の沿岸である。古代エジプトでは、すでに薬草として栽培されていたという記録もあるらしい。