箱館奉行所は来夏完成

◎光る匠の技〜函館五稜郭公園内
 江戸幕府の北の拠点だった箱館奉行所の復元工事が函館市特別史跡五稜郭跡で進んでいる。来年夏の完成・公開に向け、覆いに囲まれた現場では連日、本州から集められた宮大工や左官工ら約30人が腕を振るう。「大棟」(おおむね)と呼ばれる奉行所本体の瓦ぶきもほぼ終わり、この夏には覆いが外され、巨大な外観が姿を現す。
 箱館奉行所は1864年幕府が北方警備と蝦夷地(北海道)開拓の拠点として建設し、1971年(明治4年)に明治新政府により取り壊された。
 復元は函館市が観光資源などとするため、総事業費約18億円で文化庁や北海道の補助を受けて2006年に着工。発掘調査の結果と古写真、古文書を基にして、当時と同じ場所に高さ約16mの大棟など3棟を建設する。
 大棟の現場では、太鼓やぐらを乗せた赤い瓦屋根が目を引く。福井県の瓦職人が扱う赤瓦は3万8千枚。北前船が運んだ昔の瓦には色むらがあったとされ、設計した文化財保存計画協会(東京)は、あえて風合いの違う4色の瓦をモザイク状にふいた。
軒下ではヒバやスギの香りが漂う中、宮大工十数人が木づちやノミで技を生かす。現在は建物外縁を囲む「武者縁」の作業中で、藤田社寺建設(福井県)の棟梁の山本信幸さんは「八割方はできた」と仕上げを急ぐ。
内部では左官工が、ヨシを縦横に編み込んで土壁の芯にする「小舞掻き」(こまいかき)に取り組む。4月からは壁塗りも始まる。中島左官(愛知県)の杉坂健さんは「混ぜる土を変え、黄、薄緑、灰色の壁に仕上げる」という。
 くぎ隠しの飾りは京都の金物職人、玄関の軒先の飾り「懸魚」(げぎょ)は福井県の彫師と、一つ一つに本州の伝統技術が光る。函館市文化財課の田原良信課長は「歴史だけでなく、匠の技を感じられる建物にしたい」と話している。
北海道新聞夕刊より一部抜粋2009.02.28)