玉ねぎの切り方

玉ねぎは涙なしには語れない
 玉ねぎを語ろうとすれば、涙なしにはできないだろう。なにしろ玉ねぎを包丁で切っていると、止めどもなく涙があふれ出てしまう。それにしても、なぜ玉ねぎを切ると涙が出るのだろうか。
 玉ねぎを切ると細胞が壊れて、細胞のなかにある「アリイン」という物質が細胞の外に染み出てくる。そして、アリインは細胞の外にある酵素によって化学反応を起こし、揮発性の催涙物質に変化するのである。
 もちろん玉ねぎは世の料理好きな女性たちを泣かせるために、こんな悪さをしているわけではない。玉ねぎが虫に食べられて細胞が破壊されたときに、刺激物質を瞬時に作り出して撃退しようとしているのだ。しかし、結果的に世の女性たちは玉ねぎに泣かされている。
 女性なかせの玉ねぎはどう扱えばいいかというと、冷たくするに限る。この催涙物質は温度が低いと揮発しにくいので、切る直前に冷蔵庫で冷やしておくと泣かされることは少ないのである。
 玉ねぎの切り方によっても涙の出方が違う。玉ねぎを縦切りにする場合と、横切りにする場合とでは、横切りにするほうが涙が出やすいのだ。
 植物の構造は基本的に細胞を縦に積み上げたように並んでいる。植物は細胞を縦に並べることに、横からの力に対して折れにくくしているのである。
 もちろん、玉ねぎの細胞も同じように縦に並んでいる。玉ねぎを縦切りにした場合は、縦に並んだ細胞と細胞とが離れるだけなので細胞はあまり壊れない。ところが、横切りにした場合は、細胞が切られて壊れてしまう。そのため催涙物質がたくさん出るのである。
(「身近な野菜のなるほど観察記」より一部抜粋)