北海道の次世代エネルギー水素

■北海道留萌管内苫前町の水素事業 次世代のエネルギーに
 未来のエネルギーの主役に。水素エネルギーに大きな期待がかかる。
 こうした中、留萌管内苫前町が新年度、同町所有の風力発電所で水素をつくり町営の温泉施設で活用する事業に着手する。
 この技術が確立すれば、二酸化炭素排出がゼロに近い「究極のエコ」につながり、エネルギーの地産地消にもなる。歓迎したい。
 事業の流れはこうだ。同町内の風力発電所で得た電気で水を分解。できた水素を、水素化合物「有機ハイドライド」に変える。
 この化合物は液状で車での輸送が可能である。これを町営施設に運び特殊な装置で再び水素に戻し、発電用燃料電池に使う。
 風力や太陽光は天候で発電量が変動する弱点がある。加えて道内は需要に見合った送電網しかなく、再生可能エネルギーの潜在力を生かし切れていないとされる。
 余剰電力を水素に変えて貯蔵し、必要に応じて活用すれば効率的だ。その意義は大きい。
 道内は自然エネルギーの宝庫である。苫前以外にも適地はあるだろう。同様の事業が広がっていけば、設備の保守点検など関連産業の集積も期待できる。道も事業の拡大を後押ししてもらいたい。
 水素エネルギーは無尽蔵でクリーンだ。国も昨夏、水素社会の実現に向けロードマップを策定した。折しもトヨタが昨年暮れ、燃料電池車を世界で初めて一般販売した。民間の機運も高まっている。
 水素活用の先進地は福岡県である。同県糸島市の150世帯で、LPガスでつくった水素の省エネ効果を検証するなどしている。
 画期的な試みだが、こうしたガスや石油などから製造する仕組みでは二酸化炭素が出てしまう。苫前のように風力発電から取り出す方法が環境面では理想的である。
 最大のネックはコストだ。再生エネを使えば他の方法より原価は2倍以上高くなるという。燃料電池車の水素スタンドの建設費用もガソリンスタンドの数倍かかる。
 技術の向上を図り、普及を進めることで経費低減につなげる。官民一体で知恵を絞っていきたい。
 水素はエネルギー効率が高い分、万が一事故が起きれば、その被害は大きくなる。運搬や管理を含め安全性を追求してほしい。
 福島第1原発事故の教訓からいっても、原子力に替わる次世代エネルギーの開発は欠かせない。資源の乏しい日本にとって、水素はあらゆる可能性を広げる。時間をかけてでも大きく育てるべきだ。
(2015.02.16北海道新聞社説より抜粋)