10万年の歳月

万年明らかに異様に大きな目をした若い男女の画像が先にインターネット上で公開され、話題になった。米国の研究者らが予測した10万年後の人類の顔だ。
▼目が大きいのは人類が地球よりも太陽から離れた惑星に移住するようになり、薄暗い環境に適応したためという。10万年後はSFの世界だが、10万年前のことならばかなり分かっている。
▼「人類進化の700万年」(三井誠著)によると、20万〜15万年前にアフリカで誕生した現生人類(ホモサピエンス)が世界の各地に広がり始めたのがそのころだ。7万〜4万年前ごろまでにはアジア、欧州、オーストラリアに到達した。
▼言語の誕生は7万5千年前ごろ。3万年前には旧人ネアンデルタール人が絶滅し、最後の氷河期が終わった後の1万年前ごろに中東で農耕が始まった。都市文明が花開き、文字が生まれたのは約5500年前と「つい最近」のことだ。
原発から出る「核のごみ」の放射能が安全なレベルまで下がるのに要する歳月が10万年とされる。フィンランドが世界初の最終処分場を建設中だ。廃棄物を入れた容器を地下420メートルの処分用トンネルに埋めるが、安全に保管できるかは未知数だ。
安倍晋三首相は最終処分地のめどさえ立たない中、国内の原発再稼働や海外への原発輸出に突き進んでいる。10万年というとてつもない時の重みを考えた上でのことだろうか。
(2013.08.23北海道新聞の卓上四季より)