札幌市長の上田文雄氏にがれきについて聞く

■放射物質は受け入れない
Q:震災がれきを受け入れない理由は?
A:「受け入れないと判断したことが後日歴史的に誤りだったと評価されても、市民の安全は守られ、私が批判されれば済みます。もし、受け入れて間違いだったと分かったときは、市民に被害が出ている。私にはそれは耐え難いのです」
Q:広域処理は誤りですか?
A:「放射性物質は拡散させないことが基本です。ドイツ放射線防護協会も日本政府に、低レベルの放射性物質であっても拡散させてはならない、との文章を提出しています。外部被ばくは放射線源から離れていれば、大したことはありません。問題は内部被ばくです」
Q:具体的には?
A:「セシウムは水に溶けます。地下水に混じり、めぐりめぐって人の口に入る恐れがあります。内部被ばくの深刻さは、多くの学者が指摘しています。放射性物質の長い寿命の間、漏れないように管理し続けることは市町村の手に負えません。政府が集中管理するしかありません」
Q:政府は、広域処理の対象を宮城、岩手の両県は安全ながれきとしているが?
A:「両県にも放射性物質が飛散したことは明らかです。復興への協力は当然で、放射性物質がないなら、いくらでも処理します。がれきが嫌いなのではなく、放射性物質は受け入れがたいということなのです。」
Q:基準を設けること自体無意味ですか?
A:「経口摂取の可能性を考えると、何ベクレルということは関係ない。微量でも、あるということが問題です」
Q:自然界にも放射性物質は存在し、札幌市の焼却灰でも微量が検出されていますが?
A:「1キロ当たり13ベクレル〜18ベクレルの放射性セシウムを検出した。これはどうにもなりません。ただこれ以上、人為的に放射性物質を増やすべきではないのです」
Q:細野毅志環境相は、震災がれきを受け入れない自治体のことを「被災地切捨て」と発信していますが?
A:「そう言うなら受け入れ反対や疑念を持っている人たちに、放射性物質が付着していないと言えるレベルだと証明してほしいです」
Q:高橋はるみ知事は「上田市長は信念に基づいて言っている」と表現しているが?
A:「信念ではなく、真実に基づき政策を追求しています。個人の生き方の問題と言われているようで心外だ」
Q:受け入れを求める高橋知事の判断は?
A:「知事は広域処理が良い政策だと考えているのでしょう。私には市民の生活環境を保全する責任があり、従えません。道基準の『焼却前1キロ100ベクレル』のがれきを札幌市内で焼却すれば、33倍の3300ベクレルになる。ほかの手段がないなら別ですが、危険なことには保守的であるべきです」
(2012.04.07北海道新聞