小出裕章(62)

■反原発を貫く京大原子炉実験所助教小出 裕章(こいで ひろあき)
「こんな悲劇が起きる前に何とか止めたかったけれど・・・」
 東京電力福島第一原発事故が起きた今年、原子力の専門家でありながら、一貫して原発の危険を訴えてきた異端の研究者は悔やんでいる。そして怒っているのです。
 「無念です」
 推進派は「原発は絶対安全」と繰り返し、今や国内に54基の原発がある。「たかがここ数十年の電力を補うため、途方もないツケを未来に回している」
 東京生まれ。東北大の原子核工業科に入ったが、都会の利便のために地方に危険を押し付ける原発の構図に気付いた。以後40年以上、反原発住民運動を支える。異端ゆえか、1974年から勤務する京大原子炉実験所では60歳を超え、なお助教(助手)のままだ。
 福島事故後は講演会に引っ張りだこ。「反原発のカリスマ」とも呼ばれる。6月出版の「原発のウソ」(扶桑社新書)は28万部のベストセラーに。原発に無関心だった普通の市民が本を手にした。
 信念を支えたのは未来への責任。「今の大人には原発を選んだ責任、許した責任がある。でも子ども達にはにはない。これから生まれてくる子ども達のためにも一日も早く原発を止めたい」
(2011.12.16北海道新聞より)