ピンピンコロリ

◎旅立つ「瞬間」まで元気に
人間の寿命がそれぞれきめられているとしたら、その天寿を全うする寸前までピンピンしていて、寿命が尽きたある日、コロリとあの世に旅立つ。
 これが「ピンピンコロリ」。いわば、万人が望む理想の人生だと思います。
確かに、周囲の老人介護の実態を見ていると、皆さんがそう思いたくなる気持ちもよく分かります。
 家族のことを考えてみても、長患いをすることもなく、ボケずに、ある日コロリと逝った親は、どれだけ子どもに感謝されることでしょう。
「うちのおやじ、最期までボケないで死んだよ」
「偉い人だね。それに比べてうちなんか寝たきりでもう十年だもの、参っちゃうよ」
こんな会話を実際に耳にする機械も多くなりました。まさに「ピンピンコロリ」は今や「子孝行」の典型なのです。
 これは日本だけでなく、先進諸国においてもおなじです。人に世話になりながら生きる時間が短ければ短いほど、素晴らしい人生の終焉だと言われています。
 80数年元気でいて、45秒で死ぬ。これがヨーロッパでは理想の最期だそうです。
 日本の現状を考えますと、45秒ではあまりにも短すぎます。子どもたちや兄弟、友人にも知らせることを考え合わせますと、伏せてから一週間で亡くなることができたら、立派なピンピンコロリだと言えるのではないでしょうか。
 ですから、その瞬間が訪れるまでは、ボケずに元気でいることが大切なわけです。
(医学博士・湘南長寿園病院院長)北海道新聞一部抜粋